中谷宇吉郎随筆集 /中谷宇吉郎

応用物理学者の中谷宇吉郎(1900-62)による、戦前から戦後に書かれた随筆集。自分が行っている研究や日常的な題材を通して、一般の方に科学の面白さが伝わるような題材が多いかな。科学者然とした、修飾が少なく簡潔な語り口が魅力的です。

自分のような理系学生にとっては、研究、というか自然の探求に対する姿勢という点で考えさせられました。具体的な話でも、例えば有効数字について、「物理の方では三桁目まで精密な測定値が得られれば、大抵の場合には、それで先ず充分に精密な測定と思って差し支えない」という記述に納得させられ、読んだ後は、自分の実験結果で得られた値について少なくとも3桁は注意を払うことにしたり。

明治に流行した千里眼をとりあげ、似非科学の流行に対して警告した「千里眼その他」も面白かったです。現在でも状況は変わらないので。さらに、きちんとした学問においても、「生物線(ミトゲン線)」という生物が出す放射線が、学説として大流行(その後誤りと判明)したのも興味深い。査読付きだろうと流行に乗るのは危険だぞ、と自戒。

中谷宇吉郎随筆集 (岩波文庫)

中谷宇吉郎随筆集 (岩波文庫)