インファナル・アフェア III 終極無間 監督:アンドリュー・ラウ

香港のマフィア対警察を描いた激渋サスペンス。インファナル・アフェアIIはIより時間的に前の話でしたが、IIIはIのエンディングから直接繋がった後日談。Iをもう一回見直したほうが理解できるかも。

シリーズ最終話ですが、殺伐としたドンパチがメインだったI,IIに比べて、ぐっと心理描写に重心が移ってます。その点では、個人的にはI,IIの方が好きかも。しかし大好きなシリーズなんで、ここで手放しでベタ褒めさせてもらいます。

まず、それぞれのキャラクターがそれぞれの思惑を持って交差する、プロットの練り加減が尋常じゃない。IIIでは、Iの前と後の2つの時間軸でお互いに影響しながら話が展開するので、人物の交差が前作よりさらに複雑になってる感がある。膨大かつ重要な伏線のお陰で、一瞬たりとも気を抜けないですよ。

そして、登場するオッサンたちの個性的かつ魅力的なことっ。マフィアのボスのサムなんて、いるだけでクラクラする。世間の「チョイ悪オヤジ」なんて一蹴するような、キャラの濃さにむしろ抱いてくれ、と。

計算された映像美、抑制されたBGM、琴線に触れる感情表現など、映画としての作法も高いレベルで保たれてる。イントロのエレベーターが下がっていくカットだけで、「かっこえー」と言わずにいられなかったですよ。映画を統一する美学の徹底振りに惚れ惚れした。

結論ですが、このシリーズは漢(おとこ)映画という一ジャンルの完成形と言えるのではないか、と思います。男なら、そして格好いい漢を見たい女なら、ぜひIから順番にどうぞ。シリーズ全部に☆☆☆☆☆