隠し剣鬼の爪　監督：山田洋次

幕末、田舎の藩を舞台に、剣の腕は立つが気の良い下級武士(永瀬正敏)の生き様を描いた人間ドラマ。

主役の人となりを示すエピソードが絞り込まれており、余裕を持って話が進んでいくため、安心して観ていられる良作です。

話と特に絡まないのに、近代的な軍隊が導入され侍制度自体が崩壊していく社会情勢も描くことで、映画に奥行きを持たせているのが上手い。時折はさまれるユーモア(田中邦衛の頑固爺に爆笑した)も含めて、この辺りの引き算と隠し味の美学はさすが巨匠。

ただ、欲を言えば、奉公人の話と同門の兄弟弟子の話が最後に絡めば良かったな、と。脚本の巧妙さを次作では期待してます。