戦闘妖精・雪風(改) /神林長平

戦闘機のディテールに懲りまくった軍事オタクものかと思いきや、SFの普遍的なテーマである人間と機械との関係性についての重厚な物語でした。戦闘機乗りである主人公は、戦場で瞬間的な判断を行えるように、情報のインプットから機器の操作というアウトプットまでの抵抗を極限まで小さくするように努力する。そうすることで自らを機械化していくんだけど、それなら最初から人間が不必要なわけで。で、実際に戦争も無人化が進んでいく。という粗筋です。

この小説で挙げられてる人間が機械と異なる点は、たぶん2つ。1つは、過大な加速に耐えられないなどの身体の物理的な制約で、もう1つは、論理的ではない直感的な物事の把握や意思。しかしこの境界も、人間のサイボーグ化や、AIの進化(小説中でも示唆されてる)によって乗り越えられるだろう。と、簡単に書いてみると、ホントに普遍的なテーマで面白くないなあ。やっぱりディテールがあるからこそのSFすね。☆☆☆

戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)

戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)