南京の真実 /ジョン・ラーベ

1937年、日本軍が侵攻する南京で、難民安全区の確立に奔走したドイツ人ビジネスマンであるラーベさんの半年間にわたる日記。南京論争は置いておいて、不謹慎ながら、これは一級のヒーローモノ・エンターテインメントですよ。

ちょっと頑固かつユーモア溢れる普通のサラリーマンが、悲惨な状況を前にドイツ人であるという自分の力に目覚める。そして、一人でも救おうと組織の代表になって(しぶしぶってとこも良し)、周りの人々の協力を得ながら奮闘する。しかし、ドイツに帰国した後は誰にも評価されずに寂しく死ぬ。これはもう、ハリウッドで映画化するしかないでしょうよ。

で、レイプと処刑として描写される日本軍の蛮行もリアルで、読んでて心が痛くなる。欲望と恐怖が剥き出しになる極限状態における集団心理の恐ろしさがひしひしと伝わってきます。

南京論争の勉強にと思って読み始めましたが、編集が上手く、ぐいぐいと引っ張る怒涛のストーリーテリングに圧倒されました。お勧め。☆☆☆☆★

南京の真実 (講談社文庫)

南京の真実 (講談社文庫)