クワイエットルームにようこそ 監督:松尾スズキ

締め切りに追われて倒れた挙句、ひょんな拍子に精神病院の隔離病棟に入ることになってしまったフリーライター(内田有紀)が、奇妙な精神病患者との交流を通して自分を見つめなおす、コメディ風人間ドラマ。松尾スズキ特有のあのハイテンションな感じで話が進むんで、最後まで息つく暇もないんですけど、観終わった後に思い返すと、人間の内面の深いところまで見せられたような気になる映画でした。

映画の始めでは、すっごく運が悪い展開が続いて普通の人がたまたま精神病院に入っちゃった(その辺のドタバタも爆笑)ように描写されます。ですけど、だんだん主人公の少し不幸な生い立ちが明らかになるにつれ、「そら、精神病院に入るのもしょうがないわ」と思えてくるんですよ。で、その生い立ちの不幸さを現実であり得る範囲に設定してあるのが上手いなあ、と。つまり、ある程度不幸な経験がありつつも日々を暮らす普通の人って、客観的に見たら精神的におかしくなってても不思議じゃない、っていうことになるわけで、結構怖い話です。

まあ、でもそんなもんだよなあ、人間だもの。

●感想リンク

松尾スズキ監督の非情さが炸裂する怖い映画 - 超映画批評:"笑いで開かれた観客の心に強烈な一撃を加える、とにかく怖い映画である。そしてその怖さとは、つまるところ人間の心に潜む闇の部分、表面に出てきてほしくないものの重さそのものといえる。"