ミスト 監督:フランク・ダラボン

ミスト [DVD]

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アメリカの片田舎で、正体不明の「何か」に襲われショッピングセンターに立て篭もった人々を描く、ホラーなパニック映画。「ミスト」というタイトルどおり、街は深い霧に覆われ、ショッピングセンターの外の状況が全く分からない、ほとんど密室となるのが特徴的です。

で、結論から言うと、すげー面白かった。不穏な冒頭から衝撃のラストまで一瞬たりとも目が離さない、尋常じゃない緊張感に包まれた映画でした。

ショッピングセンターの外では正体不明の化け物が跋扈する一方、中では人々が疑心暗鬼から狂気にとらわれていく。まさに前門の虎、後門の狼。傑作「キューブ」とよく似た構図とテイストですね。

「キューブ」と違うところは、「キューブ」では外部の正体不明の敵に関する謎解きがメインだったのに対し、こちらはむしろ内部の集団心理がメイン。極限状態の不安から逃れるために、街の人々がトンデモなキリスト教原理主義に熱狂していく様が丁寧に描かれ、メチャクチャ怖い。

これはたぶん、現在進行形で戦時下にあるアメリカの社会状況を、製作者が意識的に反映させてるんだろうなあ。正体不明のテロと、その不安を解消するカルト宗教への狂信を普段から目の当たりにしてれば、物語展開に対して観客が抱くリアリティと恐怖感は増すわけでさ。

こう考えてくると、この映画は、自分の大好物である戦争映画の一変種と言えるかも。もちろん魔女狩りが横行する日本もアメリカと同じようなもんで、だからこそ、この映画の面白さは日本でもよく理解されるんじゃないかなあ。