万物理論 /グレッグ・イーガン

万物理論 (創元SF文庫)

万物理論 (創元SF文庫)

2055年、ある物理学者(女性で20代!)が物質に働く基本的な4つの力を統一する「万物理論」を発表する。その取材に赴いた科学ジャーナリストの主人公が、反科学主義やら何やら色んな災難に巻き込まれるという話です。これ以上ないほどハードなSFです。

研究者が意識することはあまりないと思うけど、人々の思想に対して科学は大きな(支配的と言ってよいと思いますが)影響を与えてるわけです。この本でとりあげられてるような、宇宙の成り立ちを説明することで直接に人々の世界観を変えたり、バイオテクノロジーのような、それが可能にした技術の結果として人間観を変えたり。

で、この本では、その影響を思いっきり肯定してるところが面白くて僕好み。もちろん、優生学のように科学的に間違った主張が社会を歪に変える(両者の相互作用の産物か)こともあるけれど、正確な科学的知識は人間を様々な迷信や抑圧から解放する、という信念ですね。本書は、革命家による「テクノ解放主義宣言」と考えてもらっていーかな、と。科学というこの旗の下に忠誠を誓え、みたいな。まー、僕は誓いますけどね。