グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉/飛浩隆

人の来訪が途絶えたヴァーチャル・リゾートを舞台に、平和に暮らしていたAI達と、突如襲来し全てを無にする「蜘蛛」達との戦いを描いたハードSF。

序盤はまあ普通の戦いなんですが、リゾートの本当の設定と意図が明らかになる中盤以降はガツンと来ました。リゾートが持つ素朴な表面とその下の醜悪な本質という二重構造のうえに、さらに多層をなす仮想世界、そして物理世界と、入り組んだ階層構造が素晴らしいです。

さらに登場人物が全てAIというのも特徴的。プログラム・コードであるAIに対して感情移入することの意味を考えさせられる設定なんですが、それはどんな小説や映画でも(さらには有機物の組み合わせである人間でも)同じだと気付かされたり。物語の構造自体が刺激的、というのはSFの醍醐味だねえ。

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)