自然振動があっても温暖化は進む

今回も温暖化に関する記事です。面倒臭いので記事中では専門用語をそのまま使います。分からなかったら聞いて下さい。

前回挙げたブログでまた温暖化懐疑論が出てて(温暖化懐疑論のまとめ - 池田信夫 blog)、その中に次のような記述がありました。

権威ある学術誌にも、地球温暖化が海流の影響で「相殺」されると予測する論文が出始めている:

Our results suggest that global surface temperature may not increase over the next decade, as natural climate variations in the North Atlantic and tropical Pacific temporarily offset the projected anthropogenic warming. --Keenlyside et al., Nature, May 1, 2008

ちょっと興味があったんで、元の論文を読んでみました。

この論文のテーマは、北大西洋大気海洋結合モデルの再現性向上です。モデル中の海面温度を観測値に強引に合わせると、大西洋の子午面循環における数十年スケールの自励的な変動を現実的にモデルに取り入れることができるようになり、予測性能が上がった、という話。個人的には、大気海洋結合モデルでのデータ同化をすればいいんじゃね、と思ったりしたんだけど、自分が研究の意義を理解できてないだけかもしれません。

で、問題の「地球温暖化が海流の影響で「相殺」される」かどうかって点では、それはここ十年ぐらいの話でした。子午面循環の振動がここ10年ぐらいは弱くなるフェイズなので、それに伴って全球で平均した海面水温は低くなる傾向にある。そのため、温室効果ガスが増加しても、2010年ぐらいまで海面水温は上がらない可能性がある。ただし、その後は急激に上昇し(20年間で0.5℃)、子午面循環を考慮しない場合の温暖化予測に追いつくだろう、ということでした(論文中の図4)。

一見、海面水温が上がらなくなる時期があったとしても、それは自然振動の一部であり、その後に急に温暖化することがあるから気を付けろ、ということかも。少なくとも、この論文の解釈の一つとしてそうとも言えます。