崖の上のポニョ 監督:宮崎駿
海辺の町でポニョ(魚の女の子)と宗介(モテる5歳)が出会って結ばれるまでの、人魚姫を下敷きにしたラブストーリー。宮崎駿の10作目です。
期待どおり、すっごく面白かった。ただ、何が面白いかを説明するのがやたらと難しい映画でもありました。
多分、大人が普通に見れば、色々と意味が分からないエピソードが並んでいるだけなんですよ。筋道はめちゃくちゃで、ラストの盛り上がりもなく訳の分からないまま終わってしまう。なのに、観てる間はそれを変だと思わずに、没頭して楽しめるんです。まるで夢の中みたいに、不条理なことを不条理だと思わず、その世界に飲み込まれてしまうって感じ。まあ実際、映画冒頭の海のシーンから、色彩豊かな世界がそこらじゅうで生き生きと動き回って、あっという間に夢の中へ連れて行かれた気分でしたし。
ポニョ制作に取り組む宮崎駿を取材したテレビ番組(NHK「プロフェッショナル」)によると、宮崎駿は、筋道のあるちゃんとした映画なんかにもう興味がなく、子どもが感じるような、理屈ではなく心にぽーんと入ってくる絵を撮ることだけに関心があるようです。そんなシーンだけで構成されているから、普通の映画としては崩壊しているのに何故か感動してしまう、「すげー!」としか言いようのない不思議な映画になっだんだな、と納得しました。
ま、そういうわけで、1年に1作あるかないかぐらいの怪作であることは間違いないので、観てない人は今すぐに劇場に向かったらといいと思うよー。
しっかし、宮崎駿がこうくるとは、理解はできるもののやっぱり驚きました。だって、宮崎駿は、マンガ版ナウシカを筆頭に、ガチガチの「社会」を描ける作家なわけでさ。例えば「未来少年コナン」で社会の基礎構造は分業であるという話までしてしまうほどで、ハッキリ言って、今の浅い若造には到底描けない世界を作り出せるわけですよ。そんな最高の技能をただの引き立て役にして幼稚園児の恋を描くとは。どんだけ贅沢な話ですか、と思った。
●感想リンク
なるほど!これまでもやもやしていた宮崎駿のイメージをやっと明確につかめました。他にも「ゲド戦記」と関連させて宮崎駿のメッセージ(父の不在)を読み解いてたりして、面白く読めます。
たとえばトトロにしても千と千尋にしても、人間の世界から不思議の世界に行く描写があって、そういう物語構造になってますよね。ところが『ポニョ』の場合、「この世」と「あの世」の境界が最初から最後まで判然としないんです。
ポニョにおける「夢の世界」について解説。
「崖の上のポニョ」 歪んだ物語が心を捉える - アニメ!アニメ!レビュー
なんとも奇妙に歪んだ作品、『崖の上のポニョ』を最初に観た感想だ。1時間41分の物語は、映画が本来必要とするフォーマットをことごとく逸脱しているからだ。
ポニョはすげーぞ、というレビュー。