ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 監督:ポール・トーマス・アンダーソン

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド [DVD]

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20世紀初頭のアメリカで石油掘削で富を築くある男(ダニエル・デイ=ルイス)の一代記。偏執的とも言えるほど現実主義な男の生きざまをじっくりと描いた重量級の映画で、一人で観た方がいい感じです。自分は親と一緒に観て、かなり微妙な空気になりましたよ。

ざっくり感想を書くと、息苦しいほどの圧迫感、お腹いっぱい感な映画でした。これは多分、セリフが少ないのに人物描写が濃密というのもあるんですけど、現実の様々な事柄がメタファーとして映画に投影されてるからなんだろう、と推測。

例えば、主人公が新興宗教の若い宣教師とこれでもかと侮辱し合うシーンでは、資本主義と封建主義、拝金主義と道徳的宗教、現実と理想、などなど現代アメリカの歴史の中での対立構造を連想させるとか。また、タイトルにもある「血」は、石油、全てを清めるキリストの血、家族・息子を重層的に表現してるように感じられます(どす黒い石油を頭から浴びるシーンには痺れた)。バックグランドとなるキリスト教に疎いのでよく分かりませんが、おそらくその他にも様々なメタファーが織り込まれてて、それで映画の重量感がハンパないことになってるんじゃないかなあ。

そういう意味では「カラマーゾフの兄弟」のアメリカ版だと思ったりした。ある男の描写を通して時代が丸ごと迫ってくる、骨のある映画でした。

●感想リンク

やがて血が水のごとく流される - Lucifer Rising:映画で描かれるキリスト教を詳しく解説。観た後でどうぞ。