北極の氷は融けているよ

【地球】北極の氷は融けているか?【温暖化】というエントリーを読みました。北極の海氷面積の変動について、ご自分でデータを取得・解析なさっていて頭が下がります。ただ、ちょっと扇動的すぎる気がします。

で、反論というか補足として、北極の海氷面積に関する最近の研究であるStroeveらによる2007年の論文を簡単に紹介してみます。タイトルは「Arctic sea ice decline: Faster than forecast」(和訳すると、北極の海氷減少:予測より速いよ)で、掲載誌はGeophysical Research Letters(Vol.34,L09501)。

もういきなり結果を見せますが、北極の海氷が最も少なくなる9月の海氷面積の変動がこちら。観測結果である太い赤線に注目して下さい(1953年から2006年まで、ハドレーセンターのデータ)。

短周期の増減はあるものの、1970年以降、減少しているのが分かります。その平均の減少速度は10年あたり-7.8%です。

一方で、海氷が最も多い3月の結果が下図。こちらも、その速度は10年あたり-1.8%と小さいものの、やはり減少しています。

なぜ冬(3月)の減少速度が夏(9月)に比べて小さいかというと、氷が溶けて海面が大気に露出していた方が、冬の冷たい空気によって多くの熱が奪われるため、海氷ができやすいから。夏の海氷面積が減少した分、冬に多く回復するメカニズムがあるわけです。

というわけで、その速度に違いはあるものの、夏にしろ冬にしろ北極の海氷面積は減少しています。また、面積では分かりませんが、夏にいったん融けてしまうので多年氷が少なくなり、冬の海氷が薄くなるという問題もあります。

ほんで、上の2つの図には、IPCCに採用された各研究機関の温暖化予測シミュレーションの結果も、様々な色の細い点線で示してあります(2100年まで、シナリオA1B)。ちなみに黒の太線がシミュレーション結果の平均値。

シミュレーションと観測を比べると、9月でも3月でも、現実の海氷面積はシミュレーション予測よりも急激に減少していることが分かります。2100年ぐらいに夏の北極の海氷がほぼなくなるのではと今は考えられていますが、その時期がさらに早まる可能性を示唆する結果です。論文中でこの原因について議論されていますが、まだ謎です。なんででしょ。

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