とある飛空士への追憶 /犬村小六

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

お姫様を本国に届けるために、1万2千kmの敵陣をプロペラ機単独で突破する空戦モノ。戦闘機で戦いつつ同乗するお姫様とだんだん惹かれあう、それだけのストーリーですけど、男の子としてこれ以上いったい何が要ると言うのか。いや要らない!

ほんと、実際、すぐにでも映画化できそうなほど、物語の脚本がよく練られていると思います。必要最小限の舞台設定ながら、トイレや給油も含めて、道中で無理なく様々なイベントが起こるように伏線が仕掛けられている。さらに、どのイベントもエンディングに向けてきちんと意味があるのが上手い。

例えば、上官が無謀な作戦に従事する主人公パイロットに餞別としてウイスキーをあげるんですけど、つったら、もう後は自然に話が繋がっていくのが分かるでしょ。そんな感じです。

あと、主人公二人のキャラクターが、自然に感情移入できるのもポイント高い。シャイな凄腕パイロットとツンデレ気味の美少女お嬢様という、一見ライトノベルのテンプレに見えて、それぞれの生い立ちが丁寧に描かれるので、おっさんの自分にも全然大丈夫でした。特に、お姫様が、どことなく「風の谷のナウシカ」のクシャナの若い頃(想像上)を思わせてイイね!

そんなわけで、男の子が可愛い女の子と出会って過酷な運命に立ち向かう、ということだけに焦点を当てた物語がスゴく良かったです。正直に言うと、ラストは切なさに胸がキュンとなったよ。マジで。