本泥棒 /マークース・ズーサック

本泥棒

本泥棒

いやもう、ホントにいい話で、読み終わって号泣ですよ。ここ何年かでこんなに泣いたことないぐらい。

第二次大戦中のドイツの貧民街で健気に生きる少女とその周りの人たちの話なんですけど、人物描写がとても上手いんです。辛い状況ながらも結構楽しく生きる様子が鮮やかにイメージできて。そういう何気ない日常にある人生の素晴らしさが、その悲劇的な結末とともに心に染みてさあ。

それに、ファシズムが吹き荒れる中で「物語」が人々の小さい希望になっていくというテーマ自体が、本好きにはたまらないはず。防空壕の中で読書会が開かれるところとか、ユダヤ人青年が少女に向けた童話を自分が生きたことの唯一の証として書くところとか*1、もう読んでるうちに目頭が熱くなっちゃって。とにかく素晴らしかったです。

*1:童話が書かれるのが、各ページをペンキで白く塗られた「我が闘争」ってところがもうね。