人間の測りまちがい

人間の測りまちがい―差別の科学史

人間の測りまちがい―差別の科学史

グールドという古生物学者による科学本「人間の測りまちがい」を読みました。人間の知能は1つの数字によって測定可能でありその「知能」は生得的である、という学説のキーとなる論文を再検討する内容です。おおざっぱに言うと、優生学の歴史を批判的に検討した科学本。

差別(人種、性、階級など)と科学の関係というテーマも非常に興味深いんですが、その辺りは下のリンク先を見てもらえればいいかな、と。

で、自分にとっては、先入観によっていかに調査結果の解釈が歪められるかを実証した部分が印象的でした。相関解析や主因子分析によって出てきた結果から因果関係を妄想してしまう、始めに行うデータのクオリティ・チェックの段階で先入観から恣意的にデータを選んでしまう、とか、まあ、正直言って自分の研究でも思い当たる節があって、「うう...」と嫌な汗が出てきましたよ。

もちろん、ただの数字の羅列であるデータから法則を見出すには、そういったジャンプする思考が必要不可欠です。だけど、色々調べて「あ、これが主要な力学じゃね」といったん分かった気になると、後はそれを裏付けるデータを探すのに始終してしまいがち。特に学位申請の締め切りなんかがあるとねえ。

本書では、そういう思い込みを避けるための方法も主張されています。簡単に言うと、「曇りなき眼」を持とうと無理な努力をするのではなくて、今自分が立証しようとしている仮説をきちんと整理して、自分がその仮説に引っ張られていることを意識することが大事だ、ってことですね。

ためになる本でした。

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